服役365日目
収監されてから1年が経った。
コロナ禍と就労の二重の牢獄の中には娯楽と言えるものも少なく、この1年は片手の指で足りるほどしかイベントには参加しなかった。
結果、「女性声優〜〜〜」と叫び続ける怪物に進化していた。
当然彼女はできなかった。
童貞卒業は勿論、素人童貞にクラスチェンジすることもなかった。
ただ1人居たはずの同期は研修期間中に蒸発した。無論、上司や教育係には相談があったのだろうが、ぼくの視点では突然連絡が取れなくなり、気付いた時には退職する旨のチャットが1件届いているのみであった。
1人取り残された。
今思えば研修期間中が一番忙しく、必死に仕事(課題)に取り組んでいたのかもしれない。
研修が終わり、配属先が決まった。
上司は人当たりが良く、温和な男性だった。
あまりに叱られないため、不審がっていると連れていかれた焼肉の場で部長から「怒られたことないでしょ?優しいんじゃなくて面倒くさがりなだけだよ」と言われた。俺か?
それはそうと偶然出社日に焼肉を奢ってくれたのは嬉しかったが、その日はPカップ中だった。
肉は美味かった、ビールも美味かった。
画面の向こうでは田中摩美々が恨めしそうにこちらを見ていた。
樋口円香は中指を立てていただろう。
7月から配属され、9ヶ月が経った。
仕事はある程度出来るようになった。
と思い込んでいるだけで、在宅勤務中はほとんどがサボりであったため、"それっぽいこと"を"やっているように見せる"ことが出来るようになったのだろう。
監視の目が無く、ある程度進捗が生まれていれば催促されることもない。その気になれば1〜2時間昼寝していても問題がない。
逐一教育係に報告・連絡をしていた研修期間中に取り戻した生活習慣が崩れるのは容易だった。
先月から出社勤務が再開した。
生活習慣を強引に戻しているので当然のように昼休み前後は船を漕ぐ。
入社後1週間で在宅勤務が始まったため、1ヶ月連続で出社することが初体験だった。
周りは当然のように残業をしている。
ぼくも1日のノルマを達成するために残業をした。
しばらく土日のどちらかも出社してくれと頼まれた。
みなし残業があるので休日手当は出ないらしい。
イベントや野球が開幕し週末が楽しみになっているというのにこの仕打ちである。
9時間後には後輩が出来ているという。
後輩には悪いが、ぼく自身この会社のことは何も分からず、何の成長もないまま1年が経ってしまったので頼れる先輩にはなれないと思う。
彼女がいる野郎には頼られたくはないので実はちょうどいいのかもしれない。
彼女に助けてもらえよ。俺も女の子に助けられてえんだよ。
毎週木曜の超!CUE&A!だけが楽しみになりつつある。
明日は木曜日。
木曜日だけは20時までに仕事を切り上げようと思っている。
りおちゃん、明日も来週も来月も面白い話を沢山してほしい。
同い年なのにすげえよ。いつもありがとう。